2002年 オリジナル版【フルメタル パニック】 クリスマス特別版

ありがた迷惑なクリスマス。 【中編】

 

次の日……もう少しで午後になるが、おかしい…坂井があれほど企んでいて何も起きないとは…

そして何よりも俺自身が巻き込まれない事が余計におかしく感じた。

しかし 何事もなくこのまま今日1日が無事に終えられればいいが…

そんな嫌な予感を感じながらも俺は基地から離れた森林地帯へと足を踏みいれていた。

何せこの森林地帯は俺自身 お気に入りの場所になっていた。

天気がよければ暑すぎず、自然な温かさがある。

それに今日は偶然にも非番で少しくらいはのんびりできる事が嬉しい。

俺は木の根本に腰を降ろすと仮眠をとる事にした。今の趣味は昼寝だ。

俺自身 趣味は多いのだが…釣りをしているとクルツやマオが茶化しに来る。

彼らの言うには俺が釣りをしていると前、ここに所属していた相良 宗介軍曹とダブルらしく、

やたらと茶化したくなるらしい。性格上でもよく似ているとか…。

料理もそれなりにできるが今度はコックの方が何故か落ち込んでしまう。

俺としてはフツーに調理したのだが、どうやらプロ顔負けの美味さらしい(坂井・クルツ・マオ談)

と言う事でおとなしくおさまったのが昼寝と言う理由だ。

さて、読者への説明?も一通り済んだ事だし 寝るとするか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

ん。なんか、妙に木が柔らかく感じるな…まるで、膝枕をしてもらっているみたいに…?!

不思議に思った俺はゆっくりと瞼を開いた。

「…大佐殿?…」

薄っすらと眼前に見えるアッシュブロンドの髪を見て俺は気付かないうちにそう呟いた。

確か、大佐殿は毎日執務でお忙しいはず…何故、こんな所でわざわざ自分に膝枕を?

それとも、これは夢なのか?

そんな風に混乱しつつある頭で必死に答えを導き出していると膝枕をしている女性が口を開いた。

「…クスッ、起してしまいましたか。もう少し、マエジマさんの寝顔を見ていたかったのですが…」

間違いない、この声は絶対に大佐殿の声だ。

しかし、やはり不思議だ。お忙しい身分であるはずの大佐殿が何故、ここに?

「………」

うっ、言葉がでない…返事をしなければ大佐殿に失礼ではないか…

だが、完全に照れてしまって身体も硬直状態だ。心臓もバックンバックンと破裂するくらいに

高鳴っている…困った、どうすべきか…。

俺が顔を真っ赤にして硬直していると大佐殿は『相変わらずですね』と言い微笑んだ。

俺は照れ隠しに顔を逸らした。相変わらず大佐殿との会話は苦手だ(プライベート時のみ限定)

任務中は照れてなどいられない為、普通に会話を交わす事ができているものの

やはり、私生活上などでの会話では顔を見る事すらろくにできないのだ。

「…た…大佐殿のような方がな、何故、ここにいらっしゃるのですか?」

俺がようやく口を開けたのは大佐殿の発言から10分位経過した後だった。

やはり、大佐殿はこの事を承知した上でこちらの発言を待っていてくださったのだろう。

「…えぇ、執務が早く終わったのでここに一休みしに来たのです。」

…確か大佐殿の執務の量は早くても一晩は掛りそうなくらいだと思ったが…

こんな昼間に終わるとはさすが大佐殿としか言いようがない。

俺は大佐殿の疲労解消の邪魔をしてはいけないと思い、起き上がると空を見上げた。

実のところ…照れ隠しのためでもある。

すると突然、辺りが真っ暗になった。……何も見えない…捕まえられた?

布地の袋で捕獲された俺は逆さまにされたかと思うと、なんと口を紐で閉じられてしまった。

「よぅ〜し!捕獲成功!!」

と何処からか坂井の声がする。まさか、あいつの企みとは俺を捕獲する事だったのか?

だからお忙しい大佐殿を利用して俺を完全に油断させたのか…

作戦としては見事だ誉めてやろう…しかし、お忙しい大佐殿を利用するとは言語道断!!

その腐った根性を徹底的に叩き直してやる!!

そう思い怒りに打ち震える俺だったが…

しかし………。

「…坂井さん、こんな強引なやり方でいいんでしょうか?」

「いいんですよ、こいつには…それにこいつに内緒での計画ですからねぇ、

 ちょっとばかり強引でもいいじゃないんですかい?…それにこいつ頑丈ですし、

 少しばかりぶんまわしても平気だと思いますよ。」

この野郎…一体、何を企んでいやがる。

サンドバックとかぬかしたら即刻、深海に投げ込んでやるから覚悟しとけよ。

「だから、こうやって……」

ん?なんか宙に舞うような感じが……

「ぐはっ!!」

宙を舞ったかと思ったと俺は地面に叩きつけられた。

野郎…後で覚えておけよ、倍にして返してやるからな……

…ん…なんか、打ち所が悪かったのか?まぁ、無理もないか…この状況だし…

段々、意識が遠くなって…い…く…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「…!!…」

豪華客船の汽笛と共に意識を取り戻した俺はふと、袋が出されている事に気付いた。

椅子に座った状態で縛られてもいない。

ただ、見張りとしてスーツ姿の青年がベレッタ92Fを俺に向けているだけだった。

そして、周囲をよく見ればよく見るほど豪華客船内部だ。

(とにかく、この状況をなんとかないとな……どうせ坂井の企みだ。アイツをぶん殴れば終るはずだ)

俺は行動に出た。

「…あんた、ちょっといいか?」

「…はい。」

(…アイツの関係の連れにしては生真面目なヤツだなぁ…大体はかふざけた連中が多いが…)

俺はそう思いながらも椅子に座った状態で近づいてきた青年に素早く足払いをくらわせ、

青年が仰向けに倒れた同時に立ち上がると胸襟付近を片足で踏み付け、もう片方の足で

銃を持っている腕の付け根を踏んで、相手の動きを封じた。

「…悪いが…服を借りるぞ…」

と俺は鋭く眼を光らせた。

坂井め…今に見ていろよ。お前が何を馬鹿な企みをしているかは知らないが…

先の借り…倍にして返してくれる!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

…スーツはさすがにキツイな…性に合わん。

部屋を出た俺はしばらく通路を歩いていた。

スーツを拝借したのはいいが、結果として白いYシャツと黒のズボン姿で

胸元を開き、腕まくりをしている。当然、肌着は着ていない。

ネクタイは持ち主に預け、上着はそのままかついでいる。

(…クルツみたいな格好だな…)

船内の明かりで窓ガラスが反射し、今の俺を映し出している。

ふと、立ち止まり自分の姿をよく見てみる。

髪型は綺麗に整え、後ろ髪はまとめてむすんである。

(…ま、これなら簡単にはバレないか…)

そう思うと俺は船内ホールへと向かって歩き出した。

 



<つづく>




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