2002年 オリジナル版【フルメタル パニック】 クリスマス特別版

ありがた迷惑なクリスマス。 【前編】




俺、前嶋 亮は変らない生活を送っていた。例の任務が終わり、組織に戻る予定だったが

組織の上層部が何かしたらしく、ある日突然、ミスリルの正式な隊員として採用される事になった。

正直、その時は急な話だった為、少しばかり躊躇したものの ここの隊員になる事を決意した。

今の俺には一番落ち着ける場所だから…何より俺にとって大切な人の近くにいれる事自体、
正直 幸せを感じている…。その為、任務が完了した後もこうしてミスリルに所属している。


朝、いつものように基地の食堂で食事を済ませている時だった。

同僚でもある坂井少尉が隣の席へと来ては俺に耳打ちをしたのだった。

「おい、今日は何の日か知ってるか?」

単純な話、俺は何がそんな特別だか知らないが 軍事に関係ない事は覚えていない。

と言うよりは、一般の民間人が祝うような特別な日は覚えない主義だ。俺としては混乱するからだ。

それに毎日 あれこれと忙しい為、いちいち気に掛けている程の余裕はない。

最悪…自分の誕生日さえも忘れかけている。

俺としては、人間 そんなものだろうなと内心、密かに納得している

しかし、俺はあいつ(坂井)自身が妙にテンションが高いのが気になった。

どうせ、たいした事ではないだろう。俺はあまり期待はせず本人に訊ねてみた。

「…12月23日か…知らないが、どうかしたか?」

「そうか、知らないか…実はちょっとな明日に関係があってな…へへへ」

どうやら何か企んでいるらしい、まぁ 周囲に迷惑をかけなければいいが…

こいつの場合はそう上手くはいかないだろう。

何か騒動がある度、俺が巻き込まれる…本人は友人としてのスキンシップだと言って、
勝手に納得していたが俺としては迷惑だ。

報告書を書いている時や銃の整備中などの作業中を問わず、
暇さえあれば問答無用のごとく突然 やって来てはささない事であろうと何か騒動を起こす。

この前はあいつの酒で報告書を入れてあった封筒が濡れ、提出時間内に提出するのに苦労した。

提出時間ギリギリで慌てていたが偶然にもカリーニン少佐と出会わせた為、直接 手渡ししたが
後日 少佐と会った時、『前嶋少尉…最近、飲酒しているのか?書類が酒臭かったが…』

と言われたが、その時は理由を話しなんとか少佐に納得してもらった。

が、色々とあいつに告訴したいくらいだが、どこか憎めない奴だ。

ただ今回は巻き込まないでほしいと内心 願うばかりだ。

「……そうか」

俺はそう答えると食事を終え、席を立った。

坂井も俺の後に続いて、俺の隣を同じペースで歩いて来る。

そして、坂井は俺の左肩に手を置くとさらに耳打してきた…用があるならさっさと済ませてほしい。

「…あれからどうなってんよ?」

「…なんのことだ?」

あいつが何を言いたいのかまったく理解できない、一度 あいつの頭の中を拝めて見たいものだ…

と言っても大体の見当はできている。

重火器や戦闘機など戦争系統の分野では文句なしのスペシャリスト。

銃や重火器の収集が趣味で各銃などの利点や使用目的等々、細かく…
いや 銃と重火器をほとんどを知り尽くしている。付け加えて大戦中の戦闘機及び戦車等も含む。

まぁ、そう言った点ではすごいと思っている。

しかし、あいつの自室は重火器などのコレクションルームに等しい状態になりつつある。

少佐や大佐殿からまでも整理するように指摘を受けている。

噂ではコレクションとして大戦中の核弾頭?を所持しているらしいが…

今では強制撤去されたと言う話も密かにある。

と言ったように多分、頭の中は重火器や銃弾でみっしりと詰まっているだろう…

ともかく、俺は坂井の話を上手く理解できず頭を混乱させていた。

「とぼけんなよ、た・い・さ・ど・のだよ…その後、どうなってんだ?んん?」

一瞬、俺はマジで転びそうになった。

何を言うと思ったら…大佐殿との関係の話かよ。

女性等に関する話は勘弁してほしいものだ。

ただでさえ女性と話しを交わすだけで一苦労しているのを、
恋愛の状況を話すなどと…恥ずかしくて言えやしない。

俺の弱点は相変わらずの同僚の女性クルー…しかし、現在 最も有効なのが大佐殿。

女性の前では相変わらず通常の何倍と緊張するし、大佐殿の前では意識は紙一重の状態だ。

その紙一重の糸が切れた瞬間……

俺は完全にパニック症状を起こして何語を言っているのか分からないまでに混乱する。

確かに正直に同僚に話してやるのもいいが…噂になって茶化されるのが嫌いだ。

噂を耳にする限りでは大佐殿と俺の恋愛はクルー全体に知られているが
皆、承諾しているらしいとの事だ。しかし、マデューカス中佐は艦隊から引退して今はいないが、

現役でここにいたら俺は中佐から物凄い渇などを受けていた事だろう。

「…あれから進展はしてない…残念だったな」

と嫌味の言葉は含めて俺は坂井に答えた。

あの任務完了直後、ボロボロの身体で俺が大佐殿に言った言葉はある意味では告白に…
いや、多分 告白だったんだろうな…あの時の言葉は…自分でもよくわからないな。

「…ちぇっ、相変わらずつまんねぇ男だなお前は、たまにはテッサを押し倒したりしてみろよ」

「…押し倒してどうするんだ?」

あいつの言葉を冗談と分かりながらも 俺はあえて少しきつめのツッコミを入れた。

坂井は初めて会った時から俺をよく茶化すヤツだ。

だから あいつの何気ない冗談でもすぐ判断出来るようになった。

まぁ、昔の俺は真に受けすぎて、それが冗談だと知った時とかはよく怒ったものだ。

「…亮、俺に言わせる気か?」

「…肯定だ、そう言ったのはお前だからな」

「そうだな…俺なら言葉に出来ない事をするな。うん。」

「………」

俺は坂井の返答に少し呆れていた。

言葉に出来ない事ってなんだ? 結局は自分だって困っているじゃないか。

まったく、だったら最初から人を茶化すなよ。

坂井と俺はそんなささない話をしながら自室へと戻った。






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