『正義か企みか自己満足か』 相良宗介の住まいから陣代高校までは電車を利用しなければならない。 転校してきたばかりの頃は切符を買っていた宗介も今では立派(?)に定期を購入している。 切符といえば忘れられない出来事もあったが、それはそれでいい思い出になっていた(本当か?) さて。 そんな日本の…東京の一高校生らしくなってきた宗介ではあるが… 現在、通学定期を入れている定期入れになにやら大きな問題を抱えているようである。 ガタッ! 昼休み。 昼食をとるため持参していた怪しげな干し肉をかばんから取り出そうとしたとき…問題は起こった。 「なに?お弁当でも忘れた?」 突然立ち上がり、恐ろしいくらい青ざめた宗介を見て、 すぐ目の前の関のかなめが頓珍漢なことを言う。が、その程度のことで宗介が青ざめることはない。 もちろん知っていて言ったのだが。 「いや……………。」 干し肉は忘れずに持ってきていた。 とりあえず、必要な分だけ切りさっさと食べ、教室を出て行く。 まずい…まずいぞ……。もしアレが誰かに見られでもしたら…………。 その後、午後の授業ではあまりにも落ち着きのない宗介。 休み時間になると教室を出て行き、放課後になればものすごい勢いで教室を飛び出す始末。 「相良くん一体どうしたんだろうね。」 クラス中の者が不審に思う中、かなめだけは別に気に多様子も見せなかった。 むしろどうも怒っているようである。 「あのバカ……今日の生徒会の仕事すっぽかしたわね…。」 決まり事に関しては待ち合わせや約束の時間を一秒も狂うことなく守る宗介が… 生徒会の仕事を忘れるまでの急ぎの用事とは果たして一体……。 仕方なくかなめが一人で生徒会室に行くと…林水からあるものを渡された。 「今朝生徒会に届けられたものだ。本人は来ていないようなので明日辺りに君から渡してくれたまえ。」 その渡されたものとは、通学定期である。定期の名前欄を見るとサガラソウスケと書いてあった。 今朝登校してきたら学校の門のところで拾ったという一年が届けてくれたらしい。 宗介のことは学校中の者が知っているくらい有名なので、学年が違ってもクラスは知っているという者が多い。 しかし直接届けに来なかったのはやはり近寄りがたいからだろう。 もっとも、それだけの理由ではないようだが…。 「これ落としたのに気が付いて慌てていたのかしら……。」 たしかになければそれだけ余分のお金を使うことになり、 困るには困るが…だからと言ってあそこまで慌てるものだろうか…。 定期入れは…折りたたみ式ではないので入れるところは 今定期が入っている部分だけのシンプルなものである。実に宗介らしい定期入れとも言える。 「あれ、もう一枚なにか入ってる?」 かなめが宗介の定期入れを預かってからちょうど一時間後。 生徒会の仕事もおわってみなそれぞれ帰っていった。 なぜかかなめはまだ帰ろうともしないでイスに座り、窓の外を眺めていた。 そして間もなく下校時刻になろうとした頃…生徒会室のドアが勢いよく開く。 「千鳥…こんなところにいたのか…。」 「……今日は生徒会の仕事があるって言ってたはずだけど?」 「む…すまん…急用があってだな。」 「ふーん。で、その用ってのは済んだの?」 「あ…いや……済んだというか、まだ…ではあるが…。」 「あっそ。じゃああたしの質問に答えてくれる?」 「………なんだ?」 窓から視線はずらさず…話すかなめ。こっちを向いているわけではないのに… なにか恐ろしいものを感じるのはたして宗介の気のせいかどうか…。 ゆっくり立ち上がり、生徒会室の大きな机の前まで歩き…手に持っていたものを叩きつけた。 「これは一体どーいうことかしら?相良軍曹殿?」 「…………………………!?」 叩きつけられた手がどけられ、その下から出てきたものを見て…宗介の世界は黒くなった。 机の上にあるのは、宗介の定期入れと、中に入っていたであろう定期。そして………かなめのパンちら写真だった。 「待て千鳥!誤解だ…話を聞け!!」 どがん 「お、俺だって最初は処分しようとしたんだ!」 がしゃん 「だが、その…いろいろ世話になっている君を…たとえ写真でも燃やすことなど出来なくてだな……。」 ばきぃ 「そ、その証拠に角が焦げているだろう!」 「問答無用よ…。」 その一瞬後、頭から血を流し、倒れる宗介。とうとう動かなくなってしまった宗介を見て、 ようやく気が済んだのか、机の上の写真をポケットにしまう。 「一応あんたの言い分を信じてあげる。でもこれは没収。 あたしが責任もって処分するわ。あと、帰ったらネガも渡してもらうわよ。」 「……………。」 「なによその顔。」 「………ネガはもらってなかった……。」 「…………………………。」 「…………………………。」 「…………………………な・ん・で・す・っ・て・ぇ?」 この日、二度目の天罰が降りる。
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