相良宗介は、アーバレストを使っての演習のため、メリダ島に帰還していた
「演習終了……」
<ご苦労様です、軍曹殿>
コックピット内でやることも終えて、一息ついた
「さて、さっそくシロのやつに餌でもやってくるか……」
宗介はそう言って、コックピットから出ようとする。だが……なぜか、ハッチが開かなかった
「……どうした、アル? ハッチを開けてくれ」
すると、ウィーンと機械音を出して、どこからかほうじ茶が出てきた
<まあまあ、軍曹殿。そんなに焦らずに、もう少しゆっくりとしていって下さいよ>
「……どういうつもりだ? それに、一体どこからお茶を……」
すると、アルはなぜか寂しげな口調になってつぶやきだした
<最近、軍曹殿は……やたらとトラのことばかりにかまうのですね……>
「シロのことか? あいつは可愛いやつだ。元気そうで、俺も嬉しくなる」
ほうじ茶をずずっとすすって、本当に嬉しそうにシロについて語りだした
<……なんだか、不公平な気がします>
「なにがだ?」
<軍曹殿は、わたしに対して冷たいじゃないですか。それなのに、そのシロさんにばかりかまって……不公平です>
「…………」
まさか、ロボットがヤキモチか?
宗介は頭が痛くなってきた
「アル。お前にも愛情を持って接してるつもりだぞ。その証拠に、昨日もオイルを入れてやっただろう」
<あのオイル、古いやつの使いまわしじゃないですか。それなのに、あっちは肉○○キロですか!>
「……使いまわしは、リサイクルのためだ」
そう言ってやってから、ふうとため息をついた
「……分かった。今度、お前の機体を俺の手で磨いてやろう。ぴかぴかになるくらいにな」
<本当ですか>
「ああ。だから信じろ。俺は決して、シロと比べてはいない。接する態度も同じようにしてやってるつもりだ」
<そっ、そうですよね。失礼しました。いや、軍曹殿に限って扱いに差別するなんて……そんなことないですよね>
「そうだ。分かったら、ハッチを開けてくれないだろうか」
<ああ、そうですね。では軍曹殿、お時間取らせてすいませんでした>
そのアルの声はいつもと違い、明るくて、やけに素直だった
ハッチが開き、宗介が降り立つと、そこに白いトラがすり寄ってきた
「ぐるるん☆」
すると、宗介の表情がパアっと明るくなり、その後頭部をなでてやった
「おお、シロ。わざわざここまで迎えに来てくれたのか。嬉しいぞ」
さっきの態度とは一転し、実に楽しそうに、シロとじゃれあう
「ぐるおおん☆」
「よしよし。おやつにプリンをたくさん買っておいたぞ。お前のために、特に評判のいい店のやつだ。シロも気に入るはずだ」
「ぐるるん☆」
シロが舌を出して宗介の頬を舐め、宗介は「くすぐったいぞ」と言って笑っていた
<…………>
アルは、やっぱりなにか違うと思いながらも、黙って指をくわえてそれを見てるだけだった
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