The Next Of O.M.O
第二話
宗介東北温泉人情篇

前回のあらすじ
 前回を読んでください。(え
 短いのですぐ読めますから。

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 宗介は仙台駅にいた。
 彼はここで新幹線から在来線に乗り換える。目的地は東北地方のある温泉だった。
 彼が仙台駅のなかを歩いていると、ポスターが目に入った。
何枚か貼ってあるポスターのうち野球の試合のポスターの隣にサーカス団のポスターが貼ってある。
彼はその前で足を止めた。
 ポスターには銀髪の少女の写真が載っていた。彼は自分がいた部隊を思い出す。
そこにも銀髪の少女がいた。そして彼が今から向かう温泉はその部隊にいた
金髪のドイツ人から教えてもらった場所だった。

(あいつらも今は何処にいるのだろうな…)

 彼はあの時から部隊と連絡が取れなかった。


ちなみにそのサーカス団の練習では。

「ううう、クルツさん、やっぱり空中ブランコなんて無理ですよぉ。」
「何言ってるんだテッサ!ここで諦めちゃ駄目だ!メリダ島でのコトを忘れたのか?」
「そ、それは…」
「そうよ、テッサ、ここで諦めたら駄目。これからのためにも頑張ってやってみなさい!」
「メリッサ… わ、分かりました!私、頑張ります!」

そして周りから「いいぞ!」だとか「頑張れ!」とか声がかかる。
 こうして彼女は血の滲むような特訓の末、すごい空中ブランコのすごい大スターになるのだが…
そりゃあ間違ってるぜ、元ミスリル西太平洋部隊。
 ちなみに食事はボルシチ(カリーニンさん手作り)が多いです。まさに臥薪嘗胆。


 さて宗介は列車を二本ほど乗り継いで目的の駅に着いた。小さな駅だった。
宗介と一緒に降りたのは高校生だけ。彼は駅を出ると教えてもらった温泉街の旅館まで歩いて行くことにした。
 温泉街までの道は自然があふれていた。森は赤く染まり、それを水面に映した川を橋で渡った。
宗介は橋の上からしばらく山の景色を見ていた。
そしてかなめのことや、ミスリルのことを思うのだが――、
その後ろ姿を帰宅途中の女子高生達が不思議そうに見ていたことを彼は知らない。
 しばらく歩いていくと温泉街に入った。地方ということと平日であるということで人はそう多くない。
歩いているのは高校生たちだけである。
 宗介は自分の旅館を見つけた。
そこは家族だけでやっているような小さな旅館だった。さっそく中にはいるとすぐに女将さんが出てきてくれた。

「相良宗介といいますが…」
「ああ!相良さん! ちょっと待ってくださいね。今鍵を出しますから…」

と女将が鍵を出しているとき、宗介が靴を脱ごうとしていると、奥から高校生くらいの女の子が現れた。

「いらっしゃいませ〜。あ、お客さん、さっき橋にいた人だ!」
「ん? …君は?」

宗介も日本での生活、というか常識的な生活に馴染んできたので「貴様は誰だ?」などということは無くなりました。
ただし、殺意も混じったような視線はなおってませんが。

「あ、あの、私の両親がここをやってるんですよ。はい。」
「ああ、そうか」

宗介の視線で彼女は恐がってます。可哀想に。
 そのうち女将さんが鍵を持って帰ってきました。

「相良さん、どうぞ、部屋へ案内します。」
「分かりました。」

宗介は鞄を持つと女将のあとを着いていく。部屋は二階にあった。
窓の向こうには川が流れていて、その先には赤い山があった。
 宗介が外を眺めている間に女将はお茶を用意していた。

「温泉は一階の奥にあります。それと夕食は6時にこの部屋に持ってきます。
あと朝食は下の食堂です。それでは、ごゆっくりどうぞ。」

宗介は女将のいれてくれたお茶を一杯だけのみ、温泉に入りにいった。
 温泉からも部屋からと同じような景色が見えた。
温泉の温かさに包まれてこの自然を見ていると何もかも忘れてしまいそうだった。
でも忘れられるとこの後の展開どうにもならなくなっちゃうんで忘れないで下さい。
 彼は部屋に戻っても外を眺めているだけだった。
いつの間にか日は山に沈み、川の音だけがこの部屋に響いてくる。
そして戸がノックされた。宗介が時計を見ると6時になっていた。
女将が夕食を運んできたのだろうと彼が戸を開けると、そこにいたのはこの旅館の娘だった。

「!君は…」
「ええ。ちゃんと手伝いしているんですよ。ほら。」
そう言って彼女は夕食を持ち上げると、部屋の中に運んできた。そして机に並べていく。
何回かに分けて全て彼女が持ってきてくれた。
「これで全部です。あ、この魚はそこの川で獲れたんですよ。あと、この山菜も近くで採れたものです。」
「そうか… あの、さっきはすまなかったな。」
「え? 何がですか?」
彼がいきなり謝ってきたのに娘は驚いた。
「いや、初めて会った時恐がらせてしまった。」
「それは大丈夫ですよ。それより、何かあったんですか?」
「? それはどういうことだ?」
「お客さんの目、恐いっていうより、何か悲しそうだったので… 
あ、でも嫌だったら別にいいんですよ。よく母にお客さんに失礼だからやめなさいって言われるんです。」

娘は申し訳なさそうに言うが、宗介は別に怒りもせず

「そうだな、少しだけなら話そう」

と言った。髪の長い娘は好奇心を顔に出してよろこんだ。

「本当ですか?」
「ああ、俺は1人の人物を探していた。丁度君みたいに髪が長い娘だった。
ある日、とある学園にその娘の情報があると聞いて、俺はその学園に潜入した。
俺はうまく転校生になりすまし(このとき使った書類はもちろん偽造)潜入に成功した。
そして俺はその学園の近くのアパートに住むことにした。
だが、転校した当日にそのアパートの俺の部屋に俺を生き別れの兄だと
思い込んだその学園の女子生徒たちがやってきたのだ。」

「女子生徒“たち”ですか? 1人だけじゃなかったんですね。」
「ああ。108人いた。」
「108人!?」
「そうだ。108人もの女子生徒が俺の部屋にやってきたのだ。
確かに彼女たちのおかげで食事や、洗濯など俺の生活はなかなか良かったのだが、いろいろ問題もあったのだ。
時には彼女たちの1人が風呂場を使っていたのだが、
間違って覗いてしまったりだとか、(その後五人くらいによってボコボコ)
俺を朝起こしにきた1人に布団をはがれて、フケツーと叫ばれてしまったこともあったな。(その後毎日彼女たちに襲われた)
俺はそこを何度も脱出しようとした。だが、彼女たちによってそれは全て失敗に終わってしまったのだ。
そして半年ほどそこにいたあと、俺は遂に脱出を果たしたのだ。残念だが彼女の情報も無かったしな。」
「それは大変でしたねえ。じゃあ、ここでゆっくりしていってください。」
「ああ、そうだな。」
「あ、料理冷めちゃうんで温かい内に食べてくださいね。」
「うむ。」

彼女が出て行くと彼は一人で料理をすべて平らげた。
 そして彼はその後片付けにきた娘と一緒に皿を片付けた。
娘は布団も引きますと言ったが、それは自分でやると宗介が布団を引いた。いまだ警戒心は強いままである。


翌日。
 朝食をとりに宗介は一階に降りた。食堂には宗介の分と他に2人分程度の食事だけが用意されていた。
平日なので客も少ないのだろう。食堂に入るとあの娘がいた。すぐに宗介に近寄ってくる。

「おはようございます! ええと、あそこの席ですよ。」
「うむ。」

宗介が席に着くと彼女はお茶を出してくれた。
彼女は他の客はまだ降りてきていないのでやることも無いのか宗介の近くにずっといた。

「あの、相良さんはいつくらいまでここにいるんですか?」
「む? うむ… けっこう長くなるかもしれないな…」

彼が独自に調査を始めたとき、彼の情報網に引っかかったアマルガムの情報は
『何か内部で大きなことが起こった』という程度くらいしかなかった。
ミスリルの情報もあまり手に入らなかった。そしてその状況は今も変わっていない。
いまやどこにいても情報の伝達は出来るようになったので、しばらくここに留まることにしたのである。

「そうですか… ゆっくりしていってくださいね。」
「うむ。そうだな。」

そのあと、彼女は一旦奥に戻ると暫くして戻ってきた。服はブレザーに着替えていた。

「じゃ、私、高校に行ってきますね!」
「あ、ああ…」

宗介は朝食を食べると、部屋に戻ってその日もずっと川の音を聞いて赤く染まった山を眺めていた。
昼食は女将が用意してくれた。
 そのころ旅館の娘の行っている高校の中で彼女の家の旅館に不思議な男がいるという噂が
一日で一気に伝わっていったことを宗介は知る由も無かった。
そしてある日宗介が昼食を食べに旅館の近くの食堂に行くと、そこの女将さんと

「あら、あんたあそこに泊まってる、えーと…相良君だっけ?」
「まあそうですが…」
「あんた若いのに大変なんだってねえ! そうだ、今日食べる分は全部タダにしてあげるから沢山食べていきなさい!」
「いや大丈夫ですから…」
「いいの、いいの! 何食べる?何でも作るよ!」
「むう…」

という会話があったりした。ちなみにその食堂は旅館の娘の高校の先輩で、いつも一緒に登下校していたりする。


一週間ほどして。
 宗介がいつもと同じく部屋にいると女将がやってきた。

「相良さん、あの…いつ位までここにおられるのですか?」
「む… どういうことだ?」
「いや相良さん、最初に一週間ほどお泊りだと聞いていたものですから、
次の連休にお部屋を満室にしてしまってこの部屋も開けなきゃいけないのですよ。」
「そうか… ここはなかなか気に入っていたのだが… 分かった。それまでにここを出よう。」
「申し訳ございません…」
「いや、気にするな。」

 その日の夕食。いつもどおりこの旅館の娘が夕食を持ってきた。準備が終わると宗介はきりだした。

「そろそろ俺はここを出なければならないのだが…」
「あ、母から聞きました。残念ですよ…」
「うむ、ここは気に入っていたのだがな。」
「何かいい方法は無いですかねえ。」

娘は少し考えて… そしてすぐに閃いた。

「そうだ!相良さん、ここで働きませんか?」
「む… 俺が、ここでか?」
「そうですよ!そうすればここにずっといられるじゃないですか!」
「そうか… それもいいかもしれないな。」
「じゃあ、早速親に話してきますね!」

彼女は喜んで部屋を出て行った。そして次の日には彼が住み込みでこの旅館で働くことが決まった。
荷物は彼自身が持っていたものが全てだったので引越しなども必要なかった。
素晴らしいことに彼は日本にかなり馴染んだので旅館じゅうにいろいろしかけるということも無かった。


 そして、特に問題も無く彼は仕事をこなして月日が過ぎていった。だが、ある日彼の携帯電話が鳴った。
そしてその電話の向こうでは大変な混乱が待っていて、
そこへ彼は向かわねばならないのだが… それは次の話である。


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次回「泉川極道大戦争篇」に続く。

69999 (seast) 2004/11/21





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