すごうでスパイ067 第三回 クリスマス


「♪こいびとがサンタクロース〜ってね」
「なんだそれは。」

今日はクリスマスだ。

今回の任務はカナメに気付かれることなくクリスマスプレゼントを置いてくること。
もはやバラエティ番組のノリである。

そして今、すごうでスパイの二人組は、今サンタクロースに扮装して(したつもりで)
カナメの部屋に潜入することに成功した。当のかなめは夢のなか。
いつもの強気な彼女とは違ったかわいらしい寝顔を前にして、
彼らははじめて彼女のコードネーム「エンジェル」をふさわしく感じたのだった。

6「そんなぬいぐるみで喜ぶのかよ」
7「・・・・・・多分」

ボン太くんぬいぐるみを持ったウルズ7は、それをふにふにいじりながらいくぶん自信なさそうにこたえた。

6「まぁ、スタンガンとかよりはましだろうが・・・
 にしても、やっぱかわいいなー。カナメちゃん」
7「そうだな?」
6「なんで疑問形なんだ」
7「なぜだろう。肯定だ。
 ボン太くんはかわいいとおもうぞ」
6「・・・なんかおまえヘンだぞ」
7「ふつうだぞ。ふつうすぎて胃が痛いな」

夜かなめの部屋に忍び込んで云々、というこの状況と眼前のかなめの無垢な寝顔が彼の良心を堰いているようだ。
額に浮かんだ無数の脂汗がその真実をものがたっていた。実際、胃も痛かった。

7「はやくくつしたに入れて帰ろう」
6「うわっ?!やめろって、それは俺のだ!!」
7「・・・そうだ。こっちだったな」

もそもそと、赤いくつしたにぬいぐるみを頭からつめてゆく。
すごうでスパイともあろうウルズ7が、がらに無く動揺していたようだった。ウルズ6の悪戯心がうずく。
・・・ちょっと、からかってやろうか。

6「よし。プレゼントは入れたな?」
7「うむ」
6「じゃあそこに掛けるんだ」
7「うむ」

命令をぎくしゃくとこなしてゆくウルズ7。6はそのまま続けた。

6「カナメのふとんをどいてやれ」
7「うむ」
6「カナメの耳元にゴキブリがいるぞ。しかも二匹」
7「うむ」
6「両サイドに一匹ずつだ」
7「うむ」
6「とってやれ」
7「うむ」


そうして、彼が気がつくと――
彼女のベッドに身を乗り出し、寝顔の横に両手をつく。あまりによろしくない姿勢だった。

7「・・・・・・」
6「おう、そのまま襲ってやれ!!!」
7「・・・・・・」
6「俺が許す!」
7「・・・・・・」
6「いけ!男を見せてやるんだ!!」
7「・・・・・・・・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめだ」
6「なんだ、その間は」


ウルズ6がとろんとつぶやく。

そして、一拍おいて聞こえたのは、

「なにしてんの、あんた・・・?」

ぞっとするような声。
目下のかなめはその双眸を不気味に光らせ、手元の釘バットを手にむくりと起き上がった。


***


『備考』の欄にはこう書かれていた。

7「なぐられた」
6「しぬかとおもった」

血にまみれた報告書を読むと、Kはためいきを一つついた。



END




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