『ちどりかなめを護衛せよ』
この朝、任務を全うすべく彼らは潜入先の陣代高校へむかう。
その予定ではあったのだが――
6「あたまいてえ。昨日飲みすぎた」
7「・・・・・・」
床に突っ伏して動かない。この前夜に『景気付け』と称してウルズ2と飲み会を行ったのである。
ウルズ6は見事にダウンしていた。
7「だめだ。いくぞ」
6「や、やめろ。吐く。ぜってー吐く。・・・おぇっぷ」
7「まったく、すごうでスパイの風上にもおけないな」
6「くそ。おまえだけで行けよ」
7「だめだ。『ふたりぐみ』の名目上、一緒に行かねばならんことになってる」
6「名目もくそもあるか。うっぷ。・・・・・・だめだ。しぬ」
7「なら、しね」
6「ぐぇ」
思い切り後ろの襟首を引っ張る。
いつものこととはいえ、今日ばかりはこの相棒に愛想が尽きた。はつにんむ当日に二日酔いとは。
7は、ぐったりしたウルズ6をずるずる引きずって玄関を出た。
7「ようやく着いたな」
陣代高校正門前。
無理やり液キャベを飲ませて、ようやく6は自力で歩けるようになっていた。
6が、おもむろにポケットをごそごそと探り始めた。
7「なにをしている」
6「カメラだよ、カメラ」
7「護衛任務にカメラは必要ないぞ」
6「あるのさ。・・・っしゃ!来た!」
7「・・・・・・?」
そして現れたのは、どこか大人びた印象の黒髪の少女。
その美しさを演出するように、どこからか桜の花びらがひらひらと舞い降りてきた。
6「うーん。いいね。やっぱ」
いつの間にかしゃがんで盗撮姿勢に入っていた6のカメラを取り上げた。
6「あっ。ちくしょう」
7「俺が直接彼女を護衛する。6は援護にまわれ」
6「ちぇっ」
6はライフルを抱えてすごすごと去っていった。
さぁ、これからが本番だ。
せんせい「じゃあウルズ7くん。簡単に自己紹介して」
7「すごうでスパイの相良宗介軍曹であります」
スパイにんむ初日から、いきなり本名を明かしてしまったウルズ7だった。
6「じぶんですごうでとかゆうなよ」
6は腹をかかえて笑い転げた。
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