すごうでスパイふたりぐみ 067 第十九回 最終章Z



放課後の廊下を疾走するクルツのあとに、迫る人影。

「クルツ」
「ソースケ!終わったのか」
「いや、終わらせた」
「そうかよ」

廊下の喧騒を掻き分けて、走る。
内ポケットの中のグロック19は、いつでも抜ける。

明らかに昼間の空気とは違っていた。
そこかしこから、焦げ臭いような、奇妙な匂いがする――薬品物のような何かだ。
宗介は嫌な予感がした。

(カナメ…!!)

屋上の戸を荒々しく開け放つ。

「カナメっ!!」
「あ」
「……っ」

ウルズ7は思わず息を飲んだ。
眼前の惨状は、彼にとって信じがたいものだった。

千鳥かなめが、学生服の男をボコボコに――

「ソースケ。どしたの?」
「…何だ、それは」
「ああ、これ?」

無造作に、彼女は男の髪をつまんだ。

「ひぐっ」

クルツの顔が思い切りひきつった。
ウルズ7は顔をしかめた。

7「またお前か。…風間」
「ひぐっ。うっ、うっ。また写真を取り上げられて、
千鳥かなめ50表情シリーズの最後『囚われの千鳥かなめ』の
萌え写真を撮って来い』って言われて…
このひと達に頼めば大丈夫だっておもったんだ。ひぐ、ふえっ」

涙でぐちゃぐちゃになった風間の目線を追うと、
そのむこうにはごっつい巌のような男が三人たたずんでいた。

「わしらいれば百人力じゃ!がっはっは」
「いい加減にしなさい。副会長をなめんじゃないわよ。
 今度は部室没収どころか廃部にしてやるわ」
「すいませんそれだけは」
「うぇぇ、ひっく。ひっく」


「…ということなのよ、ソースケ。
 ったく、また誰がこんなばかげたこと命令したんだか。
 って。………あの?」
「……」

ウルズ7の酷く陰気な表情――何故か、ものすごく恐い――を見て、
おもわずかなめは言葉を飲み込んだ。
何とも言い難い巨悪なオーラがたちこめる。
そして、今までにないほどに低く陰鬱な声で、

7「状況はわかった。皆帰れ。カナメもだ。
 …そして、クルツ。おまえは残れ」
6「へっ」

クルツの声が裏返る。
そのまま、ウルズ7は彼の両腕を背後からねじりあげた。

7「色々と、話したいことがあってな。
 ……なるほど、あの匂いは現像液か。お前からもプンプン匂うぞ」
「…あのう。もしかして」
7「いいから、カナメは帰れ。俺には任務がある」

流石にまごついて、すごすごとかなめは屋上を去った。

7「さて、クルツ。残念だったな、カナメの写真が入手できなくて」

空いた手で、クルツの後頭部にグロック19を突きつける。

7「その胸ポケットと、ロッカーの中にある
 マイクロフィルムを全て渡せ。死にたくなければ」
6「……」
7「落とし前をつけてもらおうか」



(いやああああああああぎひいいいいいいいいいいいいぅぅぃぃ)


「なんか今聞こえた…」

帰り道、夕暮れの空からかすかに事情を察知したかなめは、
彼の身に起こったであろう壮絶な私刑を想像しひそかに身震いしたのだった。




すごうでスパイ最終章
つづく。次回最終回!


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